前段「暗闇の向こうには・・・」

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大人になって、ドアの細い隙間の向こうの暗闇に、灯りをつけたら全貌が見えた。
そこはなんてことない普通の部屋で、家族がやさしく微笑んでこちらを見ていた。

大人になって、誰もいない部屋に響く音が気になって、覗いてみたらネズミが走ってた。
その音は毎晩うるさかったから、ネズミ捕りをしかけて、安心して眠りについた。

聞き耳をたて、背筋の神経をピンと尖らせると、
五感を使って、けっこういろんなことに気付けるもんだ。

暗闇や背後。
不安で怖かったのは、ぼくが幼かったから。
何も見えてなくて、何も知らなかったから。
想像力は豊かだったから、見えないものや聞こえないものを想像した。
まるでそこに本当に存在するかのように。

昼と夜はおなじもの。
天と地はおなじもの。
満ち欠けはおなじもの。
彼方此方はおなじもの。
未来と過去はおなじもの。

この世界とあの世界は表裏一体で、
入口は出口で、出口は入口なんだよ。